がん診療について

胆道がん

Biliary tract cancer

胆道がん

肝臓で作られた胆汁(脂肪の消化を助ける消化液)は胆のうで濃縮されて蓄えられ、胆管を通って、十二指腸へ流れ出ます。胆のうと胆管を合わせて胆道といいます。この胆のうや胆管(胆道)にできるがんが胆道がんです。胆道がんは大きく分けて胆のうがんと胆管がんに区別されます。また、胆管がんは、発生する部位に応じて肝臓のなかに分布する肝内胆管がん、肝臓外にある肝門部胆管がん、上部胆管がん、中部胆管がん、下部胆管がん、十二指腸乳頭部がんに分けられます。2015年の資料によると、我が国の胆道がんの年間死亡者数は約1.9万人と6番目に多いがんです。

胆道の位置
図1 胆道の位置

肝内胆管と肝外胆管
図2 肝内胆管と肝外胆管

肝外胆管の分類
図3 肝外胆管の分類

症状

胆管がんの多くは黄疸がでます。がんによって胆管が狭くなると、胆汁の排泄が滞ります。胆汁と一緒に排泄されるはずのビリルビンが、血液中に逆行して全身の組織にたまり、白目のほか手のひらや皮膚が黄色くなり、このことを黄疸といいます。黄疸になると、尿は褐色(血尿がでたと感じられる方もおられます)になり、便は灰白色となります。滞った胆汁に細菌が感染して発熱すると(胆管炎)、早急な狭窄の解除が必要になります。
胆のうがんは初期には症状はあらわれません。がんが進行して胆管に浸潤してから、黄疸が現れます。主な症状はみぞおちや右脇腹の痛み、体重減少、しこりなどです。

検査について

胆道がんの診断には採血、腹部超音波検査、CT、MRI、内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、PET検査などの検査が行われます。当院でも胆道がんを疑う方には積極的に超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的膵管造影(ERCP)を行っております。⇒当院の成績へ
以上のような検査を総合して胆道がんの状態を把握し、治療法を検討します。

治療について

黄疸や胆管炎は、手術療法や全身化学療法を安全に行う妨げになるので、治療開始前に黄疸を解消する処置(減黄術、ドレナージ術)を行います。一般的には、内視鏡(ERCP)を用い、十二指腸乳頭から、がんの狭窄を越えた場所にステントを留置します。⇒当院の成績へ
胆道がんの治療はがんの進行度や患者さん自身の体力や健康状態、持病によって異なります。手術は最も効果が期待できる治療法であり、当院でも積極的に行っています。開腹での手術を基本としていますが、早期の胆嚢がんに対しては腹腔鏡下での手術も行っています。
胆管がんの手術は、手術規模がかなり大きくなること、肝臓や膵臓(すいぞう)などの生命に極めて重要な臓器に直接処置が加わることで、術後合併症や手術死亡は他のがんの手術より高リスクであるのが現状です。また、手術後の再発率も決して低くありません。手術を受ける前にはその手術でどのようなメリットがあり、どの程度の危険度があるのかをよく理解しておく必要があります。胆管がんでは、がんが残っていると予後に大きく影響を及ぼすため、胆管切離断端に対する術中迅速病理診断が勧められます。

肝門部領域胆管がん

肝門部から胆管、門脈、肝動脈が分岐していく複雑な構造の影響で、肝門部領域にできたがんの手術には高い技術が必要となります。根治的手術のため、まわりの肝臓、胆のう、リンパ節はほぼ切除され、膵臓も合併切除することがあります。合併手術によって組織や臓器が切り離された場合、胆管や十二指腸を通っていた道をつくるため、縫い合わせる再建手術が行われます。広範囲に肝臓を切除する場合には術前門脈塞栓(そくせん)術を行い、残す肝臓を大きくして肝不全を防ぎます。

遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がん

遠位胆管にできたがんは、胆管が膵臓を通っているため、膵臓へ広がりやすい性質をもっています。そのため十二指腸と十二指腸に接している側の膵臓(膵頭)を切除する、膵頭十二指腸切除が基本術式になります。切除後は再建手術で、残った膵臓を小腸や胃に縫い合わせ、膵液が小腸や胃に流れるようにします。同様に、胆管と小腸、胃と小腸をつなぎ合わせます。

肝内胆管がん

がんが肝臓の端にある場合には、肝部分切除を行います。肝臓の左葉(肝臓の左側およそ1/3)と右葉(肝臓の右側およそ2/3)を越えてがんが広がっている場合や、肝門に近い場合には、大きく切除する必要があり、胆のう切除やまわりのリンパ節郭清も行うことがあります。広範囲に肝臓を切除する場合には術前門脈塞栓術を行い、残す肝臓を大きくして肝不全を防ぎます。

胆のうがん

がんの広がりによって、胆のうの周りも一緒に切除します。肝臓への浸潤がある場合は、肝切除および肝外胆管切除を行います。必要に応じてリンパ節郭清、膵臓と十二指腸の一部を切除する膵頭(すいとう)十二指腸切除術、他臓器合併切除術を行います。合併手術によって組織や臓器が切り離された場合、胆管、膵管や十二指腸を通っていた道をつくるため、縫い合わせる再建手術が行われます。肝臓への浸潤範囲が広い場合や、肝臓に栄養を送る血管への浸潤がある場合には、広範囲に肝臓を切除することもあります。残る肝臓の容積が小さいと予測される場合には術前門脈塞栓(そくせん)術を行い、残す肝臓を大きくすることで肝不全を防ぎます。胆のうがんは、腫瘍の広がりに応じて、切除する範囲、臓器が大きく異なってきます。⇒当院の成績へ
しかし手術で取りきれる範囲を越えて胆道がんが進行している場合は、手術よりも化学療法(ジェムザール+シスプラチン併用療法が標準治療として行っています)が優先されることもあります。

生活の質を重視した治療(緩和治療)

がんと診断された方は、身体的および精神的に負担がかかります。がんと診断されたときからQOL(クオリティ オブ ライフ : 生活の質)の改善を目的として緩和治療を上記の治療と併用して行っていきます。当院でも専門のチームを設けており、痛みや、だるさ、食欲低下などの身体的な症状や、不安、落ち込みなどの精神的な負担を和らげることにより、自分らしい生活を送ることができるようにサポートします。そのためにも、治療や療養生活についてご自身の希望や不安なこと、わからないことなどを担当医や看護師などの医療スタッフに伝えていただき、十分に話し合い、納得した上で治療させていただきます。⇒緩和ケアのページへ