がん診療について

大腸がん

Colorectal cancer

大腸がんについて
大腸とは

大腸は大きく分けて結腸と直腸に別れます。結腸の始まりは右下腹部にある盲腸で、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸からなります。直腸は直腸S状部、上部直腸、下部直腸からなり、肛門管へと続きます。(図1)
大腸の作用は、小腸から流れ込んだ液状の便が大腸に入ると水分が吸収されて固形便となり肛門へと運ばれます。

図1

腹腔鏡下手術の傷あと
腹腔鏡下手術の傷あと
開腹手術の傷あと
開腹手術の傷あと
大腸がんとは

大腸粘膜から発生する上皮性悪性腫瘍のことです。大腸がんの多くは「腺腫」という良性の腫瘍が悪性化して発生します。したがって、悪性化しそうな腺腫を発見したら、その時点で切除してしまえば大腸がんを予防できることになります。しかし、大腸がんの一部は、「腺腫」の時期を経ないで、正常な粘膜からいきなり発生(デノボがん)してくると考えられています。(図2)

図2

大腸がん治療ガイドラインの解説
出典:大腸がん治療ガイドラインの解説 2009年版

大腸がんの発生部位

大腸がんが最も多く発生するのは直腸で、次いでS状結腸です。結腸がんは約60%、直腸がんは約40%の頻度で発生します。(図3)

図3

全国大腸がん登録, 1995~1996
全国大腸がん登録, 1995~1996

大腸がんの症状

場所によって変化します。盲腸がん、上行結腸がん、横行結腸がんの場合、大きくなるまで症状が出にくいため、腹痛、腫瘤(固いしこり)として見つかります。慢性的な出血による貧血症状も見られます。下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がんの場合、血便、粘血便、便柱が細くなったり、便秘・下痢が特徴的です。
しかし、これらはいずれも進行がんの症状であり、早期のがんにはほとんど症状はありません。

大腸がんの病気診断、ステージ分類

大腸がんの進行度は、壁深達度、リンパ節転移程度、遠隔転移の有無によって決定されます。日本では大腸がん取扱い規約の分類を良く使いますが、国際的に用いられているTNM分類などもありますが、原則は共通です。(図4)

図4

大腸がんの病気診断、ステージ分類

大腸がんの治療法

早期の大腸がんの中には、内視鏡切除で治療が完了する病巣もあります。粘膜下層の浅い層(1000um未満)で、リンパ管や静脈にがん細胞を認めず、高分化・中分化腺がん、簇出Grade1であれば内視鏡切除のみで根治が可能です。(図5)

図5

治療ガイドライン
出典:大腸がん 治療ガイドライン 2014年版

外科手術の方法には、通常の開腹手術と腹腔鏡手術、経肛門的な局所切除術の3つの方法があります。このうち、局所切除術は肛門近くに発生した直腸がんでリンパ節転移の危険性が低いものに対して、がん病巣のみを切除する手術です。一方、開腹切除術や腹腔鏡手術では、がん病巣と一緒に転移を起こしやすいリンパ節を一緒に切除します。

1.開腹手術

腹部を大きく切開し(通常は15cm以上)、病変部位の大腸とリンパ節を摘出する方法で、メリットは、執刀医が患部を直接見て、触った感覚を確認しながら治療が進められる点です。患部を広く見渡せるため、出血などがあってもすばやく対応することが可能です。しかし、ある程度の大きさの傷が必要になるため、患者さんへの身体の負担の大きさ、手術後の痛みなどが予想されるデメリットとして指摘されています。

2.腹腔鏡手術

小さな傷(通常は5cm以下)からカメラと専用の手術機器をお腹の中に挿入し、テレビモニターを見ながら手術を行います。モニターで術野を拡大するため、繊細な操作が可能であり、細い血管も見えるため少ない出血量で手術を行うことが出来ます。手術創が小さいため、美容面で優れていることはもちろんですが、開腹手術と比較して術後の痛みが少なく回復が早いといった特徴があります。腹腔鏡による大腸がん手術は体への負担が少ないことから患者さんには優しい手術ではありますが、実施にあたっては一定の技術が必要となります。より早く腹腔鏡手術が大腸がんに導入された欧米では、進行がんに対しての長期成績が従来の開腹手術に劣らないことが報告されています。当院では、腹腔鏡手術を大腸がん治療に積極的に取り入れています。(図6)

図6

腹腔鏡手術
出典:大腸がん治療ガイドラインの解説 2009年版

3.肛門温存手術

肛門に近い下部直腸がんに対しては、以前は肛門も切除し永久人工肛門を造る手術が選択されていました。近年、技術の進歩により肛門に極めて近い場所のがんに対して、外肛門括約筋は温存し直腸と内肛門括約筋の一部を切り取り、永久人工肛門を回避する手術『括約筋間直腸切除術(Intersphincteric resection, ISR)』を施行することにより、自然肛門を温存することは可能となります。ISRは、「人工肛門以外に選択肢はない」と言われた下部直腸がんの患者さんにとって、自身の肛門を残すことを可能にした画期的な治療法です。しかし、ISRは解剖学的な知識と高度な技術を要する手術であるうえ、切除範囲によっては頻便や失禁が起きて、必ずしも術後の排便機能に十分満足できない患者さんもいらっしゃいます。また、治療対象となる患者さんの条件や長期的な経過などについては完全には明らかになっていません。ISRを選択するかどうかは、術前に担当医とよく話し合って慎重に判断することが必要です。(図7)

図7

肛門温存手術

また、肛門温存が困難な進行直腸がんに対しては、症例に応じて、術前化学(放射線)療法を施行し、出来る限り肛門を温存できるようにしている。

4.経肛門的局所切除術

リンパ節転移の可能性が低い早期の直腸がんに関しては、経肛門的に局所切除を施行し、経腹的な手術をすることなく肛門温存が可能となる『経肛門的低侵襲手術(Transanal minimally invasive surgery, TAMIS)』も積極的に行っています。TAMISを施行した後に、進行度に応じて化学放射線療法を追加しています。患者さんの肛門機能は十分に満足でき、治療成績も非常に良好です。(図8)

図8

経肛門的局所切除術

4.再発に対する治療

大腸がんの再発として最も多いのは肝転移再発です。肝転移以外では肺転移や、腹腔内にがん細胞が種をまかれたように発生してくる腹膜播腫が発生することがあります。肝転移や肺転移、局所再発では、再度の外科的切除でがん病巣全部を取り除ける場合には外科的切除が第一選択の治療となります。外科的切除が不可能な再発病巣に対しては抗がん剤を用いての全身化学療法を行います。
近年では大腸がんに有効な抗がん剤治療が次々に開発されています。1種類の薬剤のみで治療されることは少なく、通常は2種類以上の薬剤を組み合わせて治療します。抗がん剤治療は、それだけでがんを根治するほどの効果は残念ながらまだありません。