がん診療について

肝がん

Liver cancer

肝がん

肝がんでは腫瘍マーカー・腹部超音波検査 (US) スクリーニングによる径2cm以下の細小肝がんの早期発見に努め、CT、MRI、造影超音波検査、腫瘍狙撃生検による確定診断へと導いています。治療は外科的切除(約40-50件/年)、ラジオ波焼灼術(RFA、80-100件/年)肝動脈塞栓術、動注療法(約130-150件/年)ならびに分子標的薬による治療を行っています。また、これらの治療方針は、消化器内科、外科、放射線科の医師が連携して行う肝胆膵合同カンファレンスにおいて決定しています。

肝がん治療アルゴリズム

日本肝臓学会の肝がん治療アルゴリズム(2017)を図1に示します。
肝機能および肝がんの進行度に応じて治療法が選択されます。

大腸がん治療ガイドラインの解説
図1. 肝がん治療アルゴリズム 2017 (日本肝臓学会 肝癌診療ガイドライン 2017)

肝がんの治療
肝切除術、肝移植術

肝切除術は従来、出血の多い手術とされていましたが、現在では超音波凝固切開装置やソフト凝固電気メス、アルゴンレーザービームなどを使用し、出血の少ない安全な手術を施行しています。低侵襲で患者さんにも負担の少ない腹腔鏡下肝切除術は、肝部分切除と外側区域切除から開始し、2016年4月から保険適用となった肝区域および葉切除も積極的に行っています。従来の開腹手術と比較しても出血が少なく、入院期間も短縮され、開腹手術で約2週間、腹腔鏡下手術で約1週間です。
肝移植は肝臓をすべて摘出して、ドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法です。
肝細胞がんに対する肝移植は、(a)脈管への広がり・肝臓以外への転移がない、(b)がんが1つなら5cm以下、(c)がんが複数なら3個以下で3cm以内、という基準(ミラノ基準)を満たす場合に行うことがあります。日本では、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が行われています。

ラジオ波焼灼術 (RFA)
ラジオ波焼灼術 (RFA)

肝がんの径が3cm以下、肝がん個数3個以内の肝癌に対してはRFAを盛んに行っています。当院では、超音波検査にて描出困難な症例に対しては、造影超音波検査の使用やCT画像を超音波画像とfusionすることにより位置を確認するV-navigation systemを導入し、RFAを行っています。また、胆嚢近傍や腸管近傍の腫瘍、横隔膜直下に位置する腫瘍に関しては人工腹水、胸水の使用することにより、安全にRFA施行できるよう配慮しております。RFAの施行した患者さんの予後は手術施行した患者さんとほぼ変わらない結果となっております。

カテーテル塞栓療法 (TACE)
カテーテル塞栓療法 (TACE)

腫瘍に血液を送っている血管に油性の造影剤と抗癌剤の混合液を注入してから、血管をふさぐ作用のある物質を注入する治療法です。肝がんが豊富な血液を必要とする特徴を利用し、血管をふさぐことでがん細胞の働きを止めることが目的です。実際の方法は足の付け根(鼠径部)にある大腿動脈よりカテーテルという細い管を挿入し動脈の中を進ませて肝動脈、更に末梢の動脈へと入れ上記の様に薬剤を注入します。効果は手術やRFA に比較してやや劣りますが、腫瘍の数が多い方には良い適応です。

分子標的薬(経口)

患者さんの併存疾患や肝機能、肝がんの進行度によっては経口の分子標的治療薬であるソラフェニブ(約20例/年)や2017年に認可されたレゴラフェニブ、更には2018年に認可されたレンバチニブの内服治療を行っています。転移などの進行した肝がんに適応があります。

肝がんの予防

肝発がんの予防には、B型肝炎やC型肝炎に対する抗ウイルス治療など、元々の肝臓病の治療が大切です。脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)からも肝がんはできますので、適切な肝炎の治療を行っています。また、アルコールや肥満は肝発がんの原因となりますので、とくに肝臓病の患者さんには禁酒と減量をお願いしています。(消化器内科の治療参照)