がん診療について

肺がん・縦隔腫瘍・胸膜中皮腫

Lung cancer

肺がんとは

肺がんとは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞が周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れに乗って広がっていきます。転移しやすい場所は、リンパ節、脳、副腎、骨です。  肺がんは早期ではほぼ無症状です。病状の進行とともに、咳、痰、血痰などの呼吸器症状があらわれます。しかし、これらは風邪でも起こる症状ですので他の呼吸器疾患と区別できません。したがって、長引いたりして気になった場合は早めに医療機関を受診することが大切です。また、さらに進行すると胸痛や声のかれなどが起こることがあります。

肺がん診療

日本では年間に約37万人ががんで死亡していますが、その中で最も多いのが肺がんで、7万人以上が肺がんで死亡しており未だに増加しています。他のがんと同様に、禁煙など生活習慣の改善が予防につながります。また、肺がんは特異的な症状がでにくいため、早期発見が困難ながんの一つで、肺がん検診を受けることも大変重要です。
顕微鏡で見たがんの組織の特徴から、非小細胞がん、小細胞がんと大きく2つに区別して治療を行います。非小細胞肺がんはさらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分けることができます。肺がんの約60%を占めるのが腺がんで、次に扁平上皮がんが多くみられます。大細胞がんや小細胞がんは比較的発症頻度の低いがんです。
腺がんは、肺の奥の方に発生することがほとんどで、初期には症状が出にくいがんです。とくに腺がんでは、病気の原因となるような遺伝子異常が知られています。EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がその代表ですが、これらの遺伝子変異はご両親からいただいたものではないし、お子さんに受け継がれるものではありません。がん細胞だけに見られる異常です。これらの遺伝子変異によって、治療法を決定するようになってきました。
一方、扁平上皮がんは、皮膚の表面のように角質を作る性質を持ったがんです。肺の中枢部に発生することが多く、痰の中にがん細胞がみられることがあります。ほとんどが喫煙者で、喫煙歴の低下によって減少傾向です。

非小細胞がんで、早く見つかり手術をすれば完治が期待できます。最近では体への負担が軽い胸腔鏡(カメラ)による手術も広く行われています。一方、内科的な治療も飛躍的に進歩し、患者さまごとに効果的な治療法を選択できる時代になりました。抗がん剤や分子標的薬による治療、放射線療法に加え、免疫療法が新たな治療法として注目されています。
肺がんの進行度合いの評価にはTNM分類と呼ばれる病期分類(ステージ)を使用します。これは、「がんの大きさと浸潤」を示すT因子、「リンパ節転移」を示すN因子、「遠隔転移」を示すM因子の3つの因子について評価するもので、これらを組み合わせてがんの進行度合い(ステージ)を決定します。ステージはⅠ~Ⅳ期に分類され、患者さまの状態をふまえて治療法が選択されます。非小細胞がんのⅠ~Ⅱ期であれば手術が主な治療法として選択されます。手術後の病期(術後病期といいます)に応じて、抗がん剤による薬物療法がすすめられます。また、ⅢA期やⅢB期になると抗がん剤による薬物療法と放射線療法が、Ⅳ期の患者さまでは薬物療法が標準的治療法として勧められています。

非小細胞肺がんの治療法の選択

肺がん手術

早期肺がん(リンパ節転移がないI期肺がん)では、カメラを用いた低侵襲手術を施行することが多いです。当科では、皮膚切開をわきの近くに3-4cm、ほか1-2cmの穴を胸に設けて手術を行います。金属製開胸器を使用しないことで、従来の手術に比べ術後疼痛の軽減と早期離床を行えると考えられます。

腹腔鏡手術

近年、CT検診の普及やCT解像度の向上で早期肺癌の発見例が増えています。肺がんに対する標準術式は肺葉切除+縦隔リンパ節郭清ですが、当科では画像診断を中心とした臨床病理学的因子を十分に評価した上で、根治性を担保した肺機能温存を目的とした肺区域切除といった縮小手術を積極的に行っています。肺は再生しない臓器ですので、できるだけ少なく肺を切除する術式の個別化を進めています。

肺がんにおける肺切除の術式

一方、肺の中心にできたがんや周囲の臓器に浸潤したがんに対しては、がんの根治性を重視し開胸手術を行います。肺癌の治療は、切除により根治できる一部の早期癌を除き抗がん剤や放射線治療を組み合わせて行う集学的治療が原則です。したがって、治療には肺がんを専門とする内科医、放射線科医と相談の上綿密な治療計画をたてる必要があります。当院では、主に隣接する近畿中央呼吸器センターおよび大阪大学呼吸器外科と連携することで集学的な治療を可能にしています。この際、医療提供体制、緊急時の体制、緩和ケアに至るまで情報を共有する協力体制を構築しています。

また、手術年齢の高齢化のため、心血管疾患、胃十二指腸疾患、肝臓病、糖尿病などいわゆる成人病の合併や、肺気腫などで低肺機能の患者さまが増加しています。患者さまひとりひとりの病状を正確に把握した上で、治療計画をたてる必要があります。

呼吸不全

大気中から酸素を体に取り入れて、体内でできた炭酸ガスを体外に放出するという肺の本来の働きを果たせなくなった状態を呼吸不全と呼びます。慢性的な呼吸不全を引き起こす肺の病気には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎など様々な病態があげられます。低酸素血症による息切れ(呼吸困難感)が主な症状ですが、重症になると身の回りのことをするだけで息切れを感じて、日常生活が困難になります。

縦隔腫瘍
縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)とは

縦隔とは胸郭内で胸郭の最上部から横隔膜に至る部分で、左右の肺(縦隔胸膜)に囲まれた部分を言います。この部位には、心臓・大血管、気管、食道、胸腺、迷走神経、交感神経、横隔神経、リンパ節など重要な臓器が多数存在します。心臓・大血管、気管、食道を除く、縦隔内臓器から発生する腫瘍を総称して、縦隔腫瘍とよびます。したがって、縦隔腫瘍とは多種類の腫瘍を含んだ診断名であり、具体的には胸腺腫、胸腺がん、胸腺良性奇形腫、胸腺悪性胚細胞性腫瘍、リンパ性腫瘍、神経性腫瘍、先天性嚢腫、縦隔内甲状腺腫瘍などが含まれ、治療法・治療成績が異なります.特殊な状況として、胸腺腫には重症筋無力症や赤芽球ろうなどの疾患が合併することが知られています。

縦隔腫瘍の治療

腫瘍の大きさや進展度によって、腫瘍の摘出(周囲臓器の合併切除を含む)、摘出手術後に抗がん剤、放射線療法などの補助療法を追加する、 抗がん剤、放射線療法を第一選択とする場合などがあります。もし、治療せず腫瘍を放置した場合、腫瘍は大きくなったり、周囲臓器へ浸潤あるいは全身への転移などが予想され、治療は困難となると予測されます。

縦隔腫瘍の手術

全身麻酔で人工呼吸を行いながら、皮膚を切開し、胸郭を開き縦隔にある腫瘍を心臓および周囲の大血管などから剥がし切除します。
縦隔に達する方法は、正中切開(胸骨を縦に切開)、腋窩(えきか)切開(腋の下を切開)、胸腔鏡手術(カメラを用いた手術)などがあります。腫瘍が周囲の臓器(肺、血管など)に浸潤している場合、腫瘍といっしょに合併切除する場合があります。

悪性胸膜中皮腫
悪性胸膜中皮腫(あくせいきょうまくちゅうひしゅ)とは

肺などの臓器や胸壁の内側は、胸膜と呼ばれる膜に包まれています。この薄い膜には中皮(ちゅうひ)細胞が並んでいます。中皮細胞から発生する悪性腫瘍を悪性胸膜中皮腫と呼びます。この病気はほとんどがアスベスト(石綿)を吸ったことにより発生します。仕事でアスベスト吸入した方だけでなく、アスベスト関連の工場周辺の住民にも発生しています。アスベストを吸ってから中皮腫が発生するまでの期間はとても長く、数十年が経ってから発生します。
悪性胸膜中皮腫では、進行具合によって治療方針を決めます。手術で完全に取りきれる場合には手術を選択します。片肺を含めて片方の胸の中の胸膜をすべて切除する手術や、肺を残しながら胸膜をすべて切除する手術が行われていますが、大きな手術であるため、年齢や健康状態などによっては手術に耐えられない場合があります。その他、抗がん剤や放射線療法を選択しますが効果は十分とは言えず、悪性胸膜中皮腫の予後は非常に厳しいのが現状です。

当院での肺がん・縦隔腫瘍・胸膜中皮腫 診療の特徴

チーム医療で「わかりやすい診療」を実践しています

近畿中央呼吸器センターや大阪大学医学部呼吸器外科と連携をとりながら肺がん、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫の診療を行っています。当院では、患者さま一人一人の声に真摯に向きあい、患者さまの意見や希望を尊重することを心がけています。病気や治療方法の説明ではできる限りわかりやすく行い、患者さまが不安を抱えたまま治療を受けないようにわかりやすい診療を実践しています。

また患者さまが「最善の医療」を安全に安心して受けることできるように、他の診療科の医師との連携やがん認定看護師やがん専門薬剤師といった他職種によるサポートを行い、『チーム医療』の推進にも力を注いでいます。

診療の特徴