がん診療について

膵がん

Pancreatic cancer

膵がん

膵がんとは膵臓から発生した悪性の腫瘍のことを指します。一般には膵管上皮から発生する膵管がんのことをいい、膵臓にできる腫瘍性病変の80-90%を占めています。2016年の全国統計では肺がん、大腸がん、胃がんについで死因の第4位でした(表1)。わが国の膵がんは近年増加傾向にあり、毎年3万人以上の方が膵がんで亡くなっています。喫煙、飲酒、膵がんの家族歴、糖尿病、肥満、慢性膵炎などとの関連が指摘されています。

膵がん

膵臓の位置
図1 膵臓の位置

症状

膵がんは早期の状態では自覚症状がほとんどないため、早期に発見するのが困難です。症状としては腹痛、黄疸、背部痛、食欲低下、体重減少等で気づかれる方もおられます(図2)が、約1/4の方は無症状であり、健診、人間ドックなどの検査で始めて指摘されることが多いです。そのため症状がなくても検査を受けることは大切です。糖尿病の発症や、糖尿病の方の血糖値コントロールが急に悪くなった時などは膵癌を発症している場合もあるので注意が必要です。

症状
図2 症状

検査について

膵がんの診断には採血、腹部超音波検査、CT、MRI、内視鏡的膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、PET検査などの検査が行われます。当院でも膵癌を疑う方には積極的に超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的膵管造影(ERCP)を行っております。⇒当院の成績へ
以上のような検査を総合して膵がんの状態を把握し、治療法を検討します。

治療について

治療は膵がんの進行度や患者さん自身の体力や健康状態、持病によって異なります。手術は最も効果が期待できる治療法であり、当院でも積極的に行っています。膵切除術では膵臓の断端処理が完全でない場合、膵液が腹腔内に流出し、自己融解から腸穿孔や腹腔内出血という致命的な合併症をきたす可能性があり、手術においては細心の注意を要します。当科では膵切除術のメンバーを固定し、常に安定した手術を提供できる体制をとっています。その結果、平均手術時間は膵頭十二指腸切除術4時間、膵体尾部切除術2時間と他の施設に比べ比較的短時間に手術が可能となっています。また、創の小さい腹腔鏡手術も積極的に取り入れて行っています。⇒当院の成績へ
術で取りきれる範囲を越えて膵がんが進行している場合は、手術よりも化学療法(TS-1、ジェムザール、アブラキサン、FOLFILINOXなど)や放射線治療が優先されることもあります。疼痛などの症状でお困りの方は、緩和治療を併用して治療をしていきます。

生活の質を重視した治療(緩和治療)

がんと診断された方は、身体的および精神的に負担がかかります。がんと診断されたときからQOL(クオリティ オブ ライフ : 生活の質)の改善を目的として緩和治療を上記の治療と併用して行っていきます。当院でも専門のチームを設けており、痛みや、だるさ、食欲低下などの身体的な症状や、不安、落ち込みなどの精神的な負担を和らげることにより、自分らしい生活を送ることができるようにサポートします。そのためにも、治療や療養生活についてご自身の希望や不安なこと、わからないことなどを担当医や看護師などの医療スタッフに伝えていただき、十分に話し合い、納得した上で治療させていただきます。⇒緩和ケアのページへ