がん診療について

前立腺がん

Prostate cancer

前立腺がん(泌尿器科)

PSA測定・直腸診・超音波検査・MRIなどで前立腺がんが疑われた場合、前立腺針生検(組織検査)による確定診断が必要です。

前立腺生検術
画像検査

基本的に2泊3日の入院で検査を行っています。麻酔は、仙骨硬膜外麻酔で、経会陰的、基本的に16か所の組織採取を行います。病理組織検査は約2週間後に判明しますので、外来で結果を説明します。
(2017年度 前立腺針生検 290例、新規前立腺がん患者数 219例、陽性率 61.0 %)

臨床病期診断

前立腺針生検により前立腺がんと診断された場合、CT・骨シンチにより転移の有無を確認し、病気の広がりを診断します。 治療方法を決定するのに大事な要素となります。また、転移の無い前立腺がんの場合、PSA値、グリーソンスコア(がんの顔つき)なども治療方法の選択に大事な要素となります。

転移の無い前立腺がんのリスク分類

転移の無い前立腺がんのリスク分類

治療

治療方法は多岐にわたっており、臨床病期・年齢・ライフスタイルによって患者様、ご家族様とともに決定していきます。
治療方法としては、1.手術療法、2.放射線療法(+内分泌療法)、3.内分泌療法、4.化学療法、5.無治療経過観察 があります。

1. 手術療法

根治を目指すための外科的治療です。前立腺・精嚢腺を摘除し、膀胱と尿道をつなぎ合わせます。症例により、リンパ節郭清も併せて行います。 当院では2011年9月に腹腔鏡下前立腺全摘除術を導入し、2016年6月からは手術支援ロボットダヴィンチを導入、現在では、ほとんどの症例でダヴィンチによるロボット支援下前立腺全摘除術を行っています。
(2017年度 ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術 73例、腹腔鏡下前立腺全摘除術 3例、開放前立腺全摘除術 1例)
約2週間の入院が必要となります。
合併症として、尿失禁、勃起不全が挙げられます。
また、頭低位での手術となりますので、緑内障、未破裂脳動脈瘤をお持ちの方は別の治療法を選択することになります。

2. 放射線療法(+内分泌療法)

当院では、これまで基本的に三次元原体照射(3DCRT)により、1回2Gy 、計35回 70Gy の照射を行ってきました。今後、強度変調放射線治療(IMRT)による治療も可能となります。
これまでは、中リスク以上で計3年間の内分泌療法の併用を行い、治療成績は非常に良いものとなっております。
これからは、低リスク 放射線単独、中リスク 放射線治療前に約6か月の内分泌療法併用、高リスク 放射線治療前約6か月、放射線治療、治療前後計3年間の内分泌療法併用を行う予定です。
また、組織内照射療法(密封小線源療法)、重粒子線治療を希望される場合は、適宜施行施設へ紹介可能です。

3. 内分泌療法

前立腺がんには、精巣や副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激で病気が進行する性質があります。内分泌療法は、アンドロゲンの分泌や働きを妨げる薬によって前立腺がんの勢いを抑える治療です。内分泌療法は手術や放射線治療を行うことが難しい場合や、放射線治療の前あるいは後、がんがほかの臓器に転移した場合などに行われます。
基本的に前立腺がんを抑える治療となりますので、根治を目指す治療ではありません。
治療としては、基本的には、精巣より男性ホルモンを出ないようにする(除睾術、LH-RH アゴニスト(リュープリン、ゾラデックス:皮下注)、LH-RHアンタゴニスト(ゴナックス注)、男性ホルモンの働きを抑える(ビカルタミド、フルタミド:内服)両方を組み合わせる(MAB・CAB)ことで、完全に男性ホルモンが前立腺がんに作用しないようにします。
内分泌療法は、ほとんどの方に効果がありますが、次第に効果がなくなってくること(去勢抵抗性前立腺がん)があります。 新規ホルモン剤である、エンザルタミド(アンドロゲン受容体を阻害)、アビラテロン(アンドロゲン合成阻害)(+ステロイド)も使用可能です。

4. 化学療法

転移のある前立腺がんで、内分泌療法抵抗性となった場合に使用します。
当院では、ドセタキセル、カバジタキセルによる化学療法を行っています。

5. 無治療経過観察

前立腺がんと診断されたが、すぐに治療を開始しなくても急激な進行が見られないと予想される低リスク群の患者様に対し、3-6ヶ月毎にPSA値を測定、場合によっては生検をおこない、病状が進行した時点で治療を開始する方法です。

*ゾーフィゴ(塩化ラジウム)

骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、世界で初めてアルファ線と呼ばれる放射線を用いた、骨に転移したがん細胞に対して治療効果を発揮する放射性医薬品です。時期は未定ですが、当院でも導入予定です。