大阪ろうさい病院では、麻酔管理の質的向上を目的として2026年度よりAsis TIVAを導入することが決定しました。Asis TIVAは2023年に日本光電から発売されたAI制御により全静脈麻酔(TIVA: total intravenous Anesthesia)を支援する日本初の医療機器システムです。従来、静脈麻酔は麻酔科医が患者さまの状態(心電図・血圧・脳波・筋弛緩モニター)と手術の状態から判断し、鎮痛・鎮静・筋弛緩などの薬剤投与量を決定していました。Asis TIVAはリアルタイムな生体情報をもとにAIが適切な麻酔深度を自動で調整してくれるシステムです。麻酔科医もその情報を共有することでより適切な手術中の安全管理が可能になります。これは麻酔の質の向上や従来の吸入麻酔ガスによる環境への負担軽減、患者さまの安全性向上に寄与すると期待されています。
当院も吸入麻酔ガス中心の全身麻酔をおこなってきておりましたが、現部長になってから麻酔科医スタッフたちは患者さまの術後痛や吐気・嘔吐などの軽減、麻酔ガスによる地球環境の悪化の懸念(麻酔ガスも窒素酸化物であり使用後は屋外排出され環境負荷の一つとして近年問題視されています)に積極的に取り組むようになってきており、静脈麻酔の比重が増えてきました。この大切なSDGsの流れは麻酔科医として受け継いでいくべきものです。ただし個人の経験のみでは判断が難しい部分もあり、AIはそういっ
た主観を排除し、正確な判断を支援してくれます。麻酔科医もAIに教えてもらう時代がきていると感慨深いものがあります。
この麻酔システムは非常に高価で保険収載もされません。本来は大学病院等の研究施設病院に重点的に配分されてきましたが、大阪ろうさい病院もその使用価値が高いと判断され購入に至りました。これは大学病院以外では初の試みです。現在Asis TIVAを使用できる麻酔科学会認定資格者は2名ですが今後徐々に増やしていく予定です。大阪大学と並び関西の研修機関として存在意義を示し、将来の若き麻酔科医たちに静脈麻酔を学ぶ場を提供できるように努力してまいります。
麻酔科部長 松浦康司 2026年9月7日