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泌尿器科

Urology

陰茎がん
陰茎腫瘍とは

陰茎癌は男性のみに発生し、男性の悪性腫瘍の中では0.5%未満で本邦では人口10万人当たり0.2人の罹患率と比較的稀な癌ですが発展途上国では発症率がもっと高いと言われています。発症年齢は50-70歳が多く、包茎の男性はそうでない方と比べて陰茎癌のリスクが25-60%高く、喫煙やHIV感染やHPV感染といったウィルス感染も陰茎癌のリスクと言われています。

症状

約50%の陰茎癌は亀頭部や包皮から発生し、無痛性のカリフラワー状腫瘍や浅い潰瘍や発赤を呈しますが陰茎幹部に生じることは約5%程度です。陰茎癌はほとんどの場合、目視もしくは触知可能ですので、疑わしい際は速やかに医療機関を受診して下さい。しかし進行すると、陰茎からの浸出液が増大し鼠径部のリンパ節や全身に転移して倦怠感や体重減少を認めることがあります。

陰茎癌の参考画像

※男性器を撮影した症例画像になります。閲覧の際は十分にご注意ください。
陰茎癌の参考画像(クリックで閲覧)

検査
  • 視触診:視診で病変が陰茎癌か確認します。触診では病変部の硬結や鼠径部リンパ節腫脹の有無を確認します。
  • 生検検査:陰茎腫瘍が本当に癌であるかを確認するため組織生検を行います。腫瘍からの出血や感染が生じることがあるので数日間の入院を勧めています。
  • 血液検査:陰茎癌では特別な腫瘍マーカーは存在しませんが、全身に転移を有する際にはSCCという検査値が上昇し病勢を反映する場合があります。
  • CT検査:全身の転移を評価するためにCT検査を行います。
  • MRI検査:陰茎癌の深達度や骨盤内の詳細な情報を得るためにMRI検査をすることがあります。
病期分類と治療

全身に転移があるかどうかで大きく治療方針が変わってきます。以下に、陰茎癌の進行具合の目安となる2つの病期分類を示します。

病期分類(Jackson分類)
I期 癌が亀頭部のみ、もしくは陰茎の皮膚のみに限局している
II期 癌が陰茎海綿体に浸潤しているが転移は無い
III期 鼠径部のリンパ節に転移があるが遠隔転移は無い
IV期 鼠径部を越えた骨盤内リンパ節転移がある、あるいは他の臓器に転移がある
臨床病期分類(TNM分類2017)
原発腫瘍(T)
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍をみとめない
Tis 上皮内癌
Ta 非浸潤局所扁平上皮癌
T1 上皮下結合組織に浸潤する腫瘍
T1a 脈管浸潤・神経周囲浸潤が無く、かつ高分化な腫瘍
T1b 脈管浸潤もしくは神経周囲浸潤を伴う、あるいは低分化な腫瘍
T2 尿道海綿体に浸潤する腫瘍
T3 陰茎海綿体に浸潤する腫瘍
T4 その他の隣接臓器へ浸潤する腫瘍
リンパ節転移(N)
NX 所属リンパ節の評価が不可能
N0 触知可能なまたは肉眼的に腫大した鼠径リンパ節なし
N1 触知可能で可動性のある片側の鼠径リンパ節腫大が1つ
N2 触知可能で可動性のある多発または両側の鼠径リンパ節腫大
N3 固定された鼠径リンパ節腫瘤、または片側性もしくは両側性の骨盤リンパ節腫大
遠隔転移(M)
Mx 遠隔転移の評価が不可能
M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める

・陰茎癌が陰茎のみにとどまっている場合は手術療法や放射線療法を行います。手術で陰茎が温存できるかは陰茎癌の部位と大きさによります。

・陰茎癌が鼠径部のリンパ節に転移している可能性がある際は、陰茎の手術と併せて鼠径部のリンパ節郭清術や場合によっては骨盤内リンパ節郭清術を行います。

・手術の結果に応じて、これらの治療に追加で放射線治療や抗癌剤治療を行うこともあります。

・陰茎癌が鼠径部のリンパ節以外にも転移している際は抗癌剤治療が必要となります。

予後

当院では2014年から2018年までの5年間で計3例の陰茎癌治療を行いました。

  2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
陰茎部分切除術 1 0 0 1 0
放射線治療 0 0 1 0 0